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ヘラルボニーブレンド開発の経緯と、ISAI PARKへの想い。
2025年3月29日(土)に岩手県盛岡市にある百貨店「パルクアベニュー・カワトク」内にオープンする、ヘラルボニーの旗艦店「HERALBONY ISAI PARK(以下、ISAI PARK)」。
特集「ISAI PARK INTERVIEW」では、ISAI PARKの建築・設計や食、音楽などにまつわる人々を紹介します。 この記事で紹介するのは、ISAI PARKで提供するヘラルボニーブレンドを焙煎する、Nagasawa COFFEE代表の長澤一浩さん。盛岡市上田に店舗を構え、コーヒー生豆の仕入れ、焙煎、抽出、提供までを一貫して手がける長澤 一浩(ながさわ・かずひろ)さんに、ヘラルボニーブレンド開発の経緯と、ISAI PARKへの想いをお聞きしました。
記事:宮本拓海 / 写真:菅原結衣
Profile
Nagasawa COFFEE
盛岡市上田に店舗を構え、生豆の仕入れから焙煎、抽出、提供までを一貫して行うロースターカフェ。ISAI PARKでは、Nagasawa COFFEEが焙煎したヘラルボニーオリジナルブレンドを使用している。
長澤一浩
2007年 開業を目指し、富士珈機3kg焙煎機を自宅に設置し独学でコーヒーの探究を始める。
2012年 約5年の準備期間を経て岩手県盛岡市で開業
2018年 店舗を移転拡大、以前の倍のスペースを確保し、同時により高い品質を目指しPROBAT UG-15と呼ばれる1960年代製の焙煎機を新たに導入
2019年 世界的なコーヒーメディアSPRUDGEが選出する「コーヒーの仕事を通じて世界を変えている20人」に選ばれる
Interview
ーー長澤さんとヘラルボニーとの出会いを教えてください。
長澤 : ヘラルボニーが会社を設立する前、「MUKU」というブランド名で活動をしていた頃に、ハンカチを買わせてもらったり、ヘラルボニーの松田文登くんがよくお店にきてくれたりしていたので、ヘラルボニーのことはもともとよく知っていたんです。
私の娘も障害があるので、ヘラルボニーの活動にはとても共感していて、いつかなにか一緒にできることがあればぜひ協力したいな、という気持ちを持っていました。

その中で、ヘラルボニーが活動の幅を広げて、知名度がどんどん上がってきて、私たちもコーヒーでできることを増やして、少しずつ色々な人たちに知ってもらえるような段階になったときに、「盛岡に拠点を持って頑張っているもの同士、一緒に仕事ができたらいいね」と話をして、実現したのが2023年。初めての共同プロジェクトとして、4名のへラルボニー契約作家のアートを起用したコラボ限定ドリップバッグとコースターの販売を行いました。

ーードリップバッグとコースターを共同制作した後、ISAI PARKで提供するコーヒーも手掛けることが決まったんですね。依頼を受けたときは、どんなことを感じましたか?
長澤:盛岡にとって重要な場所のひとつであるカワトクが、これからも残ってほしいという想いを持っていたので、断る理由は何もなかったですね。私たちができるベストを、ISAI PARKに注ぎたいと感じて、快く引き受けました。
コーヒーの依頼を受けた後、私たちがすでに出している商品の中から提供する豆を選ぶのではなく、新しいブレンドをつくったほうがいいのではないかという提案を、こちらからさせていただきました。ISAI PARKでNagasawa COFFEEの色を出すよりも、ヘラルボニーとして出したい味をちゃんと表現したほうがいいと思ったんです。
ーーヘラルボニーブレンドは、どんな特徴のあるコーヒーなんでしょうか。
長澤:ヘラルボニーブレンドは、南米、中米、アフリカなど広いエリアの原産国の豆を合わせた、中煎りと深煎りのブレンドに仕上げています。
コーヒー豆は収穫される場所によっても味が変わるので、世界各国のコーヒー豆がそれぞれ個性を発揮し、それがうまく融合するブレンドにすることによって、ヘラルボニーやISAI PARKのコンセプトを表現した味にできるのではないかと考えました。
また、ISAI PARKには、幅広い年代の方々が訪れると思うので、どんな年代の人が飲んでも美味しく感じてもらえるように、飲みやすさやまとまりのよさを意識した味わいにしています。
私たちが大切にしていることのひとつでもあるんですが、コーヒーはかしこまって飲んだり、味を吟味して飲むと言うよりは、人と話をするときに、ゆっくりしたいときに、当たり前に傍らにあって、楽しめるものであってほしいと思っているんです。
なので、ISAI PARKでも私たちがつくるコーヒーが強く存在感を放つというよりは、その場所に溶け込んで、自然にみんなが楽しめるものになっていると嬉しいです。

コーヒーはなくても生きていけるけど、あると癒やされる、不思議な飲み物。コーヒーを当たり前に楽しめることが、実は一番の贅沢なんじゃないかとも思っているんです。
そう感じている理由には、東日本大震災が発生したときに避難所でコーヒーを提供し、たくさんの方に喜んでもらった経験が大きくて。
コーヒーがあることによって、その場が和んでいく。そうした経験が、私たちの原点にあるので、コーヒーがあることによって、癒やしや安らぎを得られたり、笑顔が生まれたりする場づくりのお手伝いができるといいなと思います。
ーーISAI PARKのオープンに向けて、Nagasawa COFFEEさんでヘラルボニーの社員が研修を受けていたそうですね。
Nagasawa COFFEEに立ってもらうことで、コーヒーの抽出や、ドリンクのサーブなどサービスにまつわる部分を学び、ISAI PARKがどんなお店になるのか、どんなことをする必要があるのかをイメージしてもらいたいという想いで、実施しました。
特にコーヒーを作るときは、どうしても技術が必要なので、そこは練習をひたすら行い、経験を積んでもらいました。ヘラルボニーが手掛けるカフェという意味では、訪れる人の期待値もすごく高いと思うので、その期待を裏切らないようなお店の運営をしてもらえるように、私たちが伝えられるものはすべて包み隠さずお伝えしました。すごく一生懸命やってもらいましたよ。

ーーISAI PARKのオープンに合わせて、新しいドリップバッグとコースターも販売されるとお聞きしました。
長澤 : はい、そうなんです。2023年に販売したものとは異なる4名の作家のアートを起用した、新しいドリップバッグとコースターを制作しています。
ドリップバッグの中に入れるコーヒー豆がヘラルボニーオリジナルブレンドになるので、そこも前回とは違うところですね。

ーー改めて、ヘラルボニーとの共同プロジェクトやISAI PARKへの想いを聞かせてください。
ISAI PARKでの取り組みもそうですが、ヘラルボニーと一緒に取り組んでいるドリップバッグとコースターの制作・販売は、商品の売上が作家さんに還元されていく仕組みをとっています。
コーヒーを飲んだ人が、美味しさや楽しさを味わうことができて、喜んで支払ってくれた対価を、作家さんが受け取るという循環をつくれていることは、すごく嬉しいです。まさにヘラルボニーと一緒にやりたかったことが実現できているなと感じます。
ぜひISAI PARKに訪れるみなさんには、コーヒーを飲みながら、盛岡に生まれた新しい空間を楽しんでもらいたいですね。
